根の治療にラバーダム防湿は必須です!
皆さんこんにちは、しんがい歯科院長の新谷です。
今回は、少しずつですが周知されつつある
『ラバーダム防湿』
について書きたいと思います。
みなさん、『ラバーダム』という言葉は聞いたことがありますか?
歯科について興味のある方は、『ラバーダム防湿』という言葉は1度くらいは聞いたことや、見たことがあるのではないでしょうか?
ネットにこのような写真が落ちていました。(笑)
ステップ3はもちろん間違いです。
結論から言うと、しんがい歯科医院での歯を保存するための治療(虫歯の治療や特に根の治療)において、なくてはならないものです。
ラバーダムとは?
そもそも「ラバーダム」とはどういった物なのかというと…
治療経過の写真で見るとこのような感じです。
右下がラバーダムをかけて根の治療をしている写真です。
「ラバーダム」は治療をするときに治療したい歯だけが露出するように口の中にゴムのシートを被せて使います。要するに、お口の中にゴムの膜を張ってダムを作る、ということです。
歯にクランプと呼ばれる金具のツメをひっかけ、ゴムシート(ここでは緑に見えるものです)をフレームに引っ掻けて完成です。
ひきで見るとこんな感じです。フリーの画像を拾ってきました、虚ろな目は気にしないでください。(笑)
『あぁー、やったことある!』と思ったあなた、『うちのDrよくやってる!』と思った歯科スタッフの方、個人的には歯医者選び、職場選びを間違っていないと思って良いと思います。
しんがい歯科医院では使わない日はない!と言っても良いくらい使用頻度の高い方法ですが、実は日本の歯科医院での使用頻度は未だ非常に低いと言われ、当院に来て初めて使用する、という方ばかりです。
この方法は、アメリカのBarnumという歯科医師によって1864年にはすでに臨床で使われていたそうで、実は昔からある信頼のおける治療なんです!!
根の治療のラバーダムについて
ラバーダム防湿について患者さんに説明をしていると、こんなことを聞かれます。
「ずっと口を開けていられるか心配」
「これをしないで治療できないですか?」
などという質問をいただくことがあります。
結論から言うと
『ラバーダム無しの根管治療はありえません!』
根管治療に限らず、深いむし歯の処置や、子供の乳歯のむし歯治療もほぼ必ずと言って良いほどラバーダム防湿を行っています。
よくマイクロスコープがあるから・・・CTの検査ができるから・・・と、当院に来院される患者さんがいらっしゃいます。しかし、実は顕微鏡があるとかCBCTで診査するとかよりよっぽどラバーダムは大事なことなんです!
確かに、ラバーダムを付けることで多少の息苦しさや装着感が嫌という声も聞かれますが、当院では治療の際には必ずラバーダムをすることをご了承頂いています。
なぜラバーダム防湿が根の治療に必要なのか?
そもそもなぜ根の病気になるのでしょうか?
根尖性歯周炎と呼ばれる根の病気の主な原因は《根管内の細菌による感染》です!
実際に、1965年にKakehashiらが行った無菌のネズミを使った実験で、根尖性歯周炎の成立に細菌がかかわっている事を明確に示したものがあります。
この実験は簡単に言うと、
まず、普通の口の中に細菌がいるネズミと無菌状態で育ったネズミ(我々と一緒です)、
つまり口の中にも何処にも(餌や糞にも)細菌がいない状況のネズミた2種類の状況をつくります。
その2つのグループのネズミに歯に穴を掘り、歯髄を露出させました。(可哀想!!)
その経過をみると、無菌ネズミの歯髄はなにもせずとも治癒していったというものです。
細菌口腔内にいるネズミはどうかというと、すべて根の先に病気をつくっていまいました。(T ^ T)
ですから、治療中もしくは治療後に根管内への細菌の侵入を防がなくてはなりません。
しかし、口の中には唾液中などに沢山の細菌がいます。それが治療中に根管内へ入ってしまったり、ドクターの手や使用している器具などに付いてしまうと、清潔な状態で治療できなくなってしまい、感染のリスクが高まります。
こういった事から、根管治療中のラバーダムの使用は治療後に根の病気になるかどうかに関してとても影響を及ぼします。
質の高い治療を行う為には、ラバーダムで感染をコントロールし、滅菌された器具で可能な限り無菌状態で処置を行う事が必要不可欠ということです!
では、ラバーダムをして治療すればどのような根の病気も治って、長持ちするのでしょうか?
根の病気が治ると歯は長持ちするのか?
よく患者さんとお話ししていると、
『治療すればこの歯はどのくらいもちますか?』
と質問をいただくことがあります。確かに治療した後に長く持つに越したことはありませんし、気になるところかと思います。
ただ、ここで重要なのが、歯が持つか否かということなのですが、
Vire(1991)の文献から言えることとしては、
根の病気で歯を抜くことは少なく、多くは、歯質が薄くなってしまって歯が折れたり、
歯が被せ物を支えることができずに土台ごととれてしまうことによって、抜歯になることが多いそうです。
ですから、しっかりとした治療を行って根の病気は治すことはできますが、それと歯が長持ちすることは全く別のこととなります。
一番言いたいことは、最初の治療でいかに良い状態を保てるか?ということです。
再治療の回数が増す分だけ、歯の健全な部分が損なわれていきますから、歯は長持ちしにくくなります。ですから、ラバーダム防湿を用いて再治療を少なくすることが大切なのです。
それ以外にも、ラバーダムを使用するメリットとして
①舌などが治療の妨げにならないようにすることで、治療しやすくなり効率UP
②治療に使う薬剤などか口の中に流れるのを防ぐ
③使用する器具が口の中に落ちるのを防ぐ
などがあります。
上の前歯などは治療中に唾液は入りにくいですが、とても高濃度の薬剤を大量に使用して洗浄しますし、器具も刃物ですから、
万一飲み込んでしまったら大変です!
このように、なくてはならないラバーダムですが、ただ付けただけでは不十分なんです💦
ラバーダムをした後の消毒について
よく考えてください、ラバーダムをしても、その治療する歯には唾液や歯垢がたっぷりついていますよね?
ここから更に歯のまわりをしっかりと高濃度のイソジンなどの薬液で消毒してはじめて治療を始めることが出来るのです。
写真だと下のような感じにになります。
このやり方は1966年にMollerらが有効であると述べている方法を元に行っています。
高濃度の消毒剤ですから、しんがい歯科医院では根の治療の時にラバーダムの隙間から高濃度の薬液が漏れないように、必ずコーキング材(封鎖する材料)を使用しております。
この写真が、歯があまり残っていない状態から隔壁(補強)を行い、ラバーダムを装着した写真になります。
右の写真の白いものがコーキング材(ウルトラデントのオラシール)というものです。
ラバーはもちろん、これがないと院長は心配で治療ができません。(笑)
ただラバーをかけているだけでは、下の歯の場合は唾液も漏れてきますし、根の中を洗浄するときの薬液が漏れてしまうことになります。
コットンロールや唾液を吸引する機械だけを使った簡単な防湿では、無菌的環境を作れないのはこういった理由からなんです!(*^^*)
今回引用させていただいた文献などは古くは50年近く前の文献になります、読む人によっては、古いことばっかり話してるなー、と言われてしまうかもしれません。ただ、しんがい歯科医院では
『最新の歯科治療』という概念ではなく、当院は古くから正しいと認識されて、時の洗礼を受け検証された治療方法を採用させていただいております。
つまり、ある程度年数がたって、正しいと判断されないような治療方法や、材料については使用はいたしません。
日本での普及率はまだまだ5%程度と言われるラバーダムですが、保険治療で請求項目がない、というのも問題の1つです。
ただ、治療をするにあたってしんがい歯科医院ではなくてはならない大切な治療ですし、治療内容なのでご理解いただけると幸いです。
新谷、小金澤