根の治療が必要かどうかの診査 (電気歯髄診査 / EPT) について
こんにちは。衛生士の小金澤です(^-^)v
電気歯髄診査/Electoric Pulp Test(以下EPT)について詳しくお話ししたいと思います。
EPTに使う機材は、いろいろメーカーがありますが、この様な機械を使って歯に電気を流すものです。
患者さんが来院された時にまず行う事は「診査からの診断」です。
正しい診断ができなければ、それに合った治療方法を患者さんにお話出来ないですし、
その歯の状態改善も難しくなります。
多くの患者さんは、歯科医院に痛みや違和感などを感じていらっしゃいます。
では。。。。歯の痛みや違和感の原因は何なのか?
正しい診断を行う為にも、以前のブログでもご紹介したような様々な検査を行って状況を把握する必要があります。
その検査項目の1つである「EPT」とはどういったものかというと…
簡単に言うと《歯の神経が生きているかどうかを知るための検査》になります。
検査方法は、歯に弱い電気を流して痛みを感じたら神経が生きている可能性が高い、
感じなかったら神経が死んでいる可能性が高いという事が分かります。
ただし、この検査だけですと神経の状態を正確に把握するには不十分です。
1980年のDummerらの論文で
「炎症をおこしている歯の神経の組織学的分類と臨床所見を一致させることは困難である」
というものがあります。
理由としては
①歯の神経は硬組織に囲まれた内部にあることから直接的に反応を見ることが出来ないため、
硬組織を介した刺激で反応を見なくてはならないため
②診断を行うような状況の時は神経が炎症状態にあることが多く、それが診断を難しくさせる
などが考えられます。以上の理由から
歯の神経である歯髄の診断はとても困難!
と言われています。
そこで、神経の状態を正確に把握する為には様々な検査を組み合わせて、総合的に判断する必要が出てきます。
検査は主に
①感度の高い検査
→悪い所を漏れなく知ることができ、正常な状態を知りたい時に行う
②特異度の高い検査
→悪い所だけを知ることができ、歯が異常な状態であると知りたい時に行う
③正確度の高い検査
→病気になっているかどうか、高い確率で判断できる
この3つに分ける事が出来ます。
※感度、特異度、などについては『歯内療法(根の治療)の時のレントゲンについて、CBCTは必要か?』
の最後にかいてあるので、参考にされてください。
2013年のchachapanらによると、「EPTは特異度が高い検査である」としていますので、
この検査を行って反応がない場合は《神経が死んでしまった可能性が高い》と言えます。
その一方で
*痛みがあることや、痛みを感じるまでの反応閾値と神経の状態には相関関係はない(Matthews 1974)
*EPTは歯の神経が死んでしまったかを知るには良いが、詳しい状態を知るには不十分である(Seltzer 1963)
*EPTを行った所、神経が死んでしまった歯でも12%が痛みを感じた(Peterson 1999)
という論文からも分かるように、EPTなど1つの検査だけに頼ってしまうと誤った診断を下してしまう可能性が高いという事が言えます。
今現在、診療で行っている検査項目を1つずつ見ていくと。。。。。
これらはそれぞれ必要な検査ですが、感度・特異度・正確度全てが100%というものはありません!
ですがEPTや寒冷診・温熱診、どういった刺激で痛むのかなどを組み合わせてチェックしていくことで、
より精度の高い診査・診断をする事は可能です。
ということで、症状が出ている歯をチェックする際には、痛みを伴う検査を行う必要があります。
それを不安に感じる方もいらっしゃると思いますが、様々な角度から検査する事で不用意な治療を避けることが出来ますので、
しんがい歯科医院では、極力誤診を避けるために丁寧にいろいろな方法で診査と診断を行っています。